一例として、家具など大型の荷物を配送し、開梱と設置を行っている会社向けに開発した動態管理システムをご紹介します。
「シンプルな動態管理システムをAndroidアプリとGoogleサービスで開発」
— 伊藤崇/Book Outliner (@outliner_jp) 2018年4月8日
開発したシステムのデモです。
詳細は下記をご覧ください。https://t.co/NcVjMEbViu pic.twitter.com/5O8orgRbIY
・課題点
荷物をお待ちのお客様から、到着時刻の問い合わせが多い。
事務局では、ドライバーの状況把握が充分ではなく電話確認が必要。
お客様への回答に時間がかかってしまう。
ドライバーは、頻繁に電話がかかってくるため作業が中断される。
日報やリサイクル券の処理など、配送業務終了後の事務作業が多い。
このような課題はどの物流会社でもあるのではないでしょうか。
パッケージで販売されている動態管理ソフトも多数ありますが、多機能過ぎてしまう・導入コストやランニングコストが高いためなかなか導入にいたっていません。
そこで、スマートフォンの機能を利用して簡易的にドライバーの状況を把握するシステムを提案しました。

作業内容が記載された指示書には、問い合わせ番号のバーコードがあります。
これをスマートフォンのカメラで読み取ることで、作業のステータスを取得します。
エリアによっては、自社便ではなく協力会社のドライバーが作業するケースもあります。
専用端末を用意するのは、コストがかかるため既存のスマートフォンを利用することにしました。
また、サーバを用意するのも時間とコストがかかるものです。これは、無料で利用できるGoogleドライブとGoogleスプレッドシートを使います。
スプレッドシートに、問い合わせ番号、緯度・経度情報を登録します。
個人情報保護の観点から、住所データではなく緯度経度情報を登録します。
スマートフォンのアプリで、パーコードを読み取ると緯度経度情報を返します。
受け取った緯度経度を目的地として設定し、現在地からのルートを表示します。
バーコードを読み取った時点で、自動的に移動中にステータスが変わります。
到着時には、アプリの着車ボタンをタップします。
ステータスは、作業中に変わります。
作業終了時には、作業完了ボタンを押し、連絡事項やリサイクル券の情報を登録します。
スマートフォンでは、音声入力も利用できるので文字入力が苦手なドライバーでも利用できます。
また、重い荷物を運んだあとなどは、手が震えて文字が書きにくくなり、ストレスになります。
開発時点で、機会が苦手でもどんな人でも使えるようにシンプルにしてほしいと要望を頂いていたので、必要最小限の機能にしています。
リサイクル券番号の書き間違いや、記入漏れもかなりの頻度で発生していました。
確認作業が必要になるため、経理担当者の負担が大きくなっていました。
バーコード読み取りなら、書き間違えはありえません。
送信されたデータから、Excelなどに取り込めるため事務の負担も軽減されました。
スマートフォン側の工夫では、端末に情報を持たせないようにしました。
保持しているのは、自分が何コースかという情報と移動や作業中の問い合わせ番号ひとつだけです。
問い合わせ番号の読み取りや着車・作業完了時には、問い合わせ番号とステータスを暗号化して送っています。
Google Apps Scriptにてこれらの情報を受けとり、スプレッドシートに記録します。
作業日報は、スプレッドシートに記録されたデータから出力しサインするだけになりました。
毎日、日報作成で40分〜1時間程度かかっていたのが、5〜10分で終わるようになりました。
さて、事務局側の地図上に車両位置やステータス表示する部分は、専用のパソコン用アプリケーションを利用します。
Webからアクセス可能にすることも可能ですが、セキュリティの観点から社内からのみ閲覧可能にしました。
パソコン用のアプリケーションが、スプレッドシートのデータを取得し、地図上にマッピングしています。
このデータを大きなモニターに表示するか、担当者のパソコンから閲覧します。
この情報と、ルートごとの配送順リストを確認するだけで、お客様からの問い合わせに応えることが可能になりました。
あるルートで遅れが生じている場合も、従来はドライバーからの連絡があってからの対応になっていました。
システム導入後は、事務局で進捗状況がわかるため、早めに応援等の対応が可能になりました。
これまで作業時間のデータは取るのが手間なこともあって、実施されていませんでした。データが取れることで、メーカとの価格交渉の材料になります。
物流系の企業では商品ごとに、開梱設置時間の設定があり、一律の料金で契約しているケースが多くあります。
設定時間よりも作業時間がかかる商品があっても、価格交渉の根拠になるデータがありません。このシステムのデータと商品の情報を紐付けて解析することで、交渉の材料にすることが可能になりました。
急に配送の予定が変わったり、他のルートの応援・資材の回収などが発生することが日常的にあります。
この場合、電話やメールにてお客様の名前や住所などを連絡し、ドライバーは地図で確認する必要がありました。
このシステムを使うと、問い合わせ番号を伝えるだけで目的地が設定できます。
現状は実装していませんが、スマートフォン側に変更や新しい目的地などの情報を送るようにカスタマイズすることも可能です。
通信量や速度はそれほど必要ないため、格安SIMの低速モードでも充分実用可能です。
常にGPSを使用すると、バッテリー消費が問題になります。
こちらは、GPSではなくネットワークで位置情報を取得するようにしています。
現在地が多少ずれたとしても、プロのドライバーですので全く問題ありませんでした。
Androidアプリは、MIT App Inventorで開発しました。
ビジュアルプログラミング環境で、ブラウザから開発が可能です。
コードを記載するのではなく、機能ごとのブロックを組み合わせていく形で開発します。
javaやandroidの知識がなくても、アプリを作ることができます。
細かい作り込みなどには向きませんが、短時間でアイデアを形にするには向いています。
現在は、MTIが提供していますが、もともとはGoogleが開発したものです。
iOS対応の募金を募っているところなので、iPhoneやiPad向けの開発も可能になるかもしれません。
こちらのシステムですが、Androidアプリ・Google Apps ScriptとWindows用のローカルアプリケーションのすべてを1日で開発できました。
その後リサイクル券の対応などのカスタマイズをして、3日後には試験運用まで進めることができました。
ブログでは、今までの内容に加えて、これまで開発したものなどを紹介していこうと思います。
こんなことが出来ないかな?と思ったら、気軽に問い合わせ頂ければと思います。